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LC-MS/MSによる231種類の薬物およびその代謝物のための分析法の開発

By Sharon Lupo

処方薬および非処方薬の使用が増加するにつれ、迅速で正確かつ包括的な分析法の必要性も急速に増加してきています。歴史的に、薬物検査は、特定の集団(軍隊、職場、保護観察/仮釈放、スポーツドーピング)における死亡原因の決定または薬物使用の検出などの法医学的用途に焦点を当ててきました。しかし、現代の薬物試験は、標的化合物および試験目的が多様化し、臨床分野にも広がってきています。臨床では、処方された疼痛薬物療法の遵守を確実にし、投薬の乱用または転用を確認するために、様々な薬物および代謝物の一斉分析を求められることも多くあります。処方薬の乱用が多くなると[1]、限られた分析時間で包括的な薬物リストの正確な結果を保証できる分析方法の需要が高まります。 LC-MS / MSはイムノアッセイよりも感度と特異性に優れており、選択性と保持性に優れたRaptor™Biphenylカラムを使用することで、幅広い化合物に対し決定的な結果を得ることができます。

一般に、法医学やペインマネジメントにおける薬物検査にはまず、最小限の試料前処理で迅速に定性がおこなえる初期スクリーニングを実施します。スクリーニングで陽性となった場合、定量可能な確認分析がおこなわれます。スクリーニング法では広範囲な化合物リストを網羅するため、一般的には感度や特異性は低くなりますが、確認分析では特定の化合物(薬物)パネルに最適化された条件を用い、迅速に定量結果が供されます。一般にC18カラムが使用されており、分散保持力により分離される疎水性化合物に対しては良好に機能します。しかし、全ての化合物がこのような相互作用を示すわけではなく、今日の複雑な試料組成や困難なマトリックスの多くには、より高度な保持メカニズムが必要とされます。Rpator Biphenylカラムは、多くの治療薬によくある置換電子吸引基をもつ縮合環化合物のπーπ相互作用を利用し、構造的に多様な薬物やその代謝物に対する保持を改善します。

231種類の薬物およびその代謝物のLC-MS/MSによる分析法の開発に、RaptorBiphenylカラムを使用しました。Raptor Bphenylカラムには、今回試験に供した幅広い化合物に必要な保持力があります。また、C18では通常分離できないような、類似構造の薬物およびその代謝物40種類以上に対してより選択性が優れていました。ここで示した231種類の化合物の包括的な分析は、マルチクラススクリーニング法の開発に対するRpator Biphenylカラムの能力と有用性を示しています。さらに、LC-MS/MSスクリーニング法またはイムノアッセイスクリーニング検査と組み合わせて使用できる、各薬物パネルに特異的な確認分析法についても後半部分に記載しています。実サンプルの分析に適用する前に、有効性や再現性を確認するためにはマトリックス存在下での安定性試験やバリデーションをおこなう必要がある点に注意してください。

分析時間10分で231種類の薬物およびその代謝物の包括的分析
スクリーニング検査にはイムノアッセイがよく用いられますが、この手法にはいくつかの問題点があります。イムノアッセイは特異性に欠けるため、偽陽性の可能性があり、加えて感度が足りないために偽陰性となるリスクがあります。スクリーニングと確認分析を組み合わせた代替法としてのLC-MS/MSによる同定法の出現は、LC-MS/MSの技術的な強みを示しています[2]。しかし、LC-MS/MSを使用した場合でも、単一の同定試験ではなく、スクリーニングと確認分析を別途おこなうのが一般的です。スクリーニング法の開発をおこなう場合でも、単一の同定試験をおこなう場合でも、ユニークな保持と選択性をもつRpator Biphenylカラムを使用することでLC-MS/MSの能力を最大限にすることができます。

膨大な目的化合物を正確に同定するのは困難な作業です。今回の検討では、10種類の薬物クラスと40以上の異性体や類似構造化合物があります。分析法の開発には、目的化合物の化学的性質や移動相組成、グラジエント条件および検出器の極性等多くの検討項目が必要です。Raptor Bphenylカラムにより、平衡化時間2分、分離時間10分で231の薬物およびその代謝物の同時分析条件を検討しました(図1)。クロマトグラフィー分離も良好で、保持時間とプリカーサーイオンおよびプロダクトイオンの最適化により目的化合物は確実に同定されました。検出感度を上げるために極性の切替をおこない、ほとんどの化合物(209)はポジティブモードESI(ESI+)で、その他(22)はネガティブモードESI(ESI-)で測定しました。前述のように、少なくとも1つの化合物とプリカーサーイオンが同じである化合物が40以上あるため、そのほとんどはクロマトグラフィー分離により同定可能となりました。例外は確認用オピオイドパネルで分離できるノルオキシコドンとジヒドロコデイン、R/Sエナンチオマーであるシタロプラムとエスシタロプラムおよびエナンチオマーで、別々のパネルで測定が可能なレボルファノール(オピオイド)とデキストロルファン(幻覚剤)です。

図1: Raptor Bphenylカラムを用いたLC-MS/MSによる231種類の薬物およびその代謝物の分析

ピークリストと分析条件の表示

Multiclass Drug Panel on Raptor™ Biphenyl by LC-MS/MS
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確認と定量のための個別パネル用分析条件の最適化
確認分析はまず、薬物クラスごとに化合物を分類することにより体系的に検討しました。化合物は15-20種類ずつに分けて水溶液に溶解し、溶液中の同重体化合物の分離にはとりわけ注意しました。化合物毎に2つのトランジションを設定し、ポジティブモードとネガティブモードの両方でエレクトロスプレーイオン化法(ESI)による測定をおこない、スカウティンググラジエントを実施しました。スカウティンググラジエントはリニア(10-100%有機溶媒)でおこない、3種類の添加剤(①5mM酢酸アンモニウム ②5mMギ酸アンモニウムを含む0.1%ギ酸 ③0.1%ギ酸)を検討しました。この結果に基づき、最適な移動相、グラジエント条件および極性を各パネル毎に決定し、化合物は保持時間によりスケジュールされた多重反応モニタリング(MRM)によって測定しました。

最終的に最適化されたクロマトグラフィー条件および各パネルの結果を図2(オピオイド/代謝物)、図4-6(抗不安薬/代謝物およびバルビツール酸系薬)、図7(非ステロイド系抗炎症薬[NSAID])、図8(精神刺激薬)、図9(抗てんかん薬)、図10(抗精神病薬、図11(抗うつ剤)および図12(幻覚剤)に示しました。いくつかの一般的なペインパネルの組成決定は比較的簡単ですが、いくつかのグループ(オピオイドおよびその代謝物、抗不安薬およびその代謝物、バルビツール酸系薬およびNSAID)の分析にはさらなる検討が必要です。

オピオイドはペインマネジメントに使用されており、世界で最も一般的に処方され、乱用された薬物の一つです。臨床医は頻繁にコンプライアンスモニターのために患者を検査するので、これらの化合物は薬物検査における主要な化合物です。これらの化合物には、構造異性体の存在、ブプレノルフィンおよびノルブプレノルフィンの感度の低さ、ノルオキシモルホン、モルヒネ、およびヒドロモルホンの保持力の弱さといった分析上の課題があります。これらの課題に対し、Raptor Bphenylカラムのクロマトグラフィー性能は非常に優れています(図2)。0.1%ギ酸を添加したアセトニトリルと水によるグラジエントでこのカラムを使用すると、全ての構造異性体が分離できました。15成分が5つのプリカーサーイオン(M+H)を共有するため、LC-MS/MSの使用にはさらなる特異性が必要です。ブプレノルフィンとノルブプレノルフィンの感度に関する問題については、Raptor Bphenylカラムの2.7µmのコアシェル粒子によるシャープなピークにより、感度が向上しました。このパネルにおける酸性移動相の選択もまた、緩衝塩を使用した場合に比べて感度を上げる要因となりました(図3)。最後に、オピオイド分析において特筆すべきは、Raptor Bphenylの保持メカニズムによりノルオキシモルホン、モルヒネ、およびヒドロモルホンの保持力が増した点です。親水性マトリックスからこれらの低分子極性化合物の分離がよくなったことで、より正確な定量が可能となりました。

図2: Raptor Bphenylカラムによるオピオイドおよびその代謝物パネルの確認分析

ピークリストと分析条件の表示

Opioid Drug Panel on Raptor™ Biphenyl by LC-MS/MS
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図3: 緩衝塩を添加しない酸性移動相によるオピオイド薬の感度向上

ピークリストと分析条件の表示

Opioids Poster Figure 2: Effects of Mobile Phase on Buprenorphine Response
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ベンゾジアゼピンや筋弛緩剤、睡眠薬、鎮静薬およびZ薬(非ベンゾジアゼピン系薬)などの抗不安薬は、その他の薬物、一般にはオピオイドと併用して乱用されることが多い薬物です[3]。オピオイドと同様に、このグループにもまた、バルビツール酸系薬がネガティブモードで検出される一方で、他のほとんどの化合物がポジティブモードで検出されるという分析上の課題があります。このことは分析を著しく複雑にし、極性切り替えと十分なデータ取り込み速度を有する装置を必要とします。さらに、バルビツール酸系薬であるアモバルビタールおよびペントバルビタールは位置異性体であり、分離は極めて困難です。異性体間の分離が重要でない場合は、Raptor Bphenylカラムは抗不安薬とバルビツール酸系薬の同時分析を8分で可能とします。このカラムのユニークな選択性は、アモバルビタールとペントバルビタールを~40%分離し、機器のデータ取込み速度の最適化が不可欠なシャープなピークとなります。この場合の抗不安薬およびその代謝物とバルビツール酸系薬のパネルの分析条件およびクロマトグラムを図4に示します。バルビツール酸系薬異性体の分離が必須である場合は、抗不安薬とバルビツール酸系薬を別々に分析します。バルビツール酸系薬の分離にRaptor C18を使用することで、アモバルビタールとペントバルビタールは分析時間6分でほぼ完全分離し(図5)、抗不安薬の分析は、Raptor Bphenylカラムにより平衡化も含めて5.5分で分離することができます(図6)。このシンプルなアプローチは、バルビツール酸系薬異性体の分離をよくし、データ取込み速度の比較的遅い装置でも使用可能です。

図4: Raptor Bphenylによる抗不安薬およびその代謝物とバルビツール酸系薬の同時分析パネル

ピークリストと分析条件の表示

Combined Antianxiety Drugs and Barbiturates on Raptor™ Biphenyl by LC-MS/MS
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図5: Raptor C18によるバルビツール酸系薬分離の改善

ピークリストと分析条件の表示

Barbiturate Drug Panel on Raptor™ C18 by LC-MS/MS
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図6: Raptor Bphenylによる抗不安薬およびその代謝物(バルビツール酸系薬は含まない)の分析

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Anti-Anxiety Drug Panel on Raptor™ Biphenyl by LC-MS/MS
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図7に示した最適化されたNSAIDパネルも、確認分析のパフォーマンスにさらなる検討が必要なパネルです。NSAIDは一般に安全と考えられていますが、その有効性と幅広い使用および併用薬との作用により毒性が生じ得ます[4]。NSAID分析における主な課題は、それが多様な薬物群であり、ほとんどの分析メソッドが単一の薬剤とその代謝物に対して最適化されていることです。このパネルでは、Raptor Bphenylと極性切替のスケジュール化、およびポジティブモードとネガティブモードの両方で感度を最大にする移動相の選択により、1回の分析で27種類のNSAID[アセトアミノフェンを含む]の同時分析が可能となりました。

Figure 7: NSAIDs panel confirmation analysis on the Raptor™ Biphenyl column.

View peak list and conditions

Analgesics and Non-Steroidal Anti-Inflamatory Drugs (NSAID) on Raptor™ Biphenyl by LC-MS/MS
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図8: Raptor Bphenylによる精神刺激薬パネルの確認分析

ピークリストと分析条件の表示

Stimulant Drug Panel on Raptor™ Biphenyl by LC-MS/MS
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図9: Raptor Bphenylによる抗てんかん薬パネルの確認分析

ピークリストと分析条件の表示

Anti-Epileptic Drug Panel on Raptor™ Biphenyl by LC-MS/MS
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図10: Raptor Bphenylによる抗精神病薬パネルの確認分析

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Anti-Psychotic Drug Panel on Raptor™ Biphenyl by LC-MS/MS
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図11: Raptor Bphenylによる抗うつ剤パネルの確認分析

ピークリストと分析条件の表示

Anti-Depressant Drug Panel on Raptor™ Biphenyl by LC-MS/MS
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図12: Raptor Bphenylによる幻覚剤パネルの確認分析

ピークリストと分析条件の表示

Hallucinogen Drug Panel on Raptor™ Biphenyl by LC-MS/MS
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まとめ
臨床や法医学における薬物検査の需要が高まるにつれて、多くの薬物検査施設がそのスピード、感度および特異性の向上をLC-MS/MSに頼りつつあります。ここに示した分析条件は、231種類の薬物およびその代謝物の迅速かつ正確な分析を提供します。ここでは、分析条件の最適化とRpator Biphenylを使用することで、40種類以上の異性体を含む多くの困難な分析種を確実に同定することができました。このカラムの強力な保持力とユニークな選択性は、一般的に用いられるC18の強力な代替手段となります。

参考文献
[1] Centers for Disease Control and Prevention, CDC grand rounds: prescription drug overdoses – a U.S. epidemic, Morbidity and Mortality Weekly Report, 61 (1), (2012) 10-13. http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6101a3.htm
[2] American Society of Addiction Medicine, Drug testing: a white paper of the American Society of Addiction Medicine (ASAM), Chevy Chase, MD, October 26, 2013. http://www.asam.org/docs/default-source/publicy-policy-statements/drug-testing-a-white-paper-by-asam.pdf
[3] J. Jones, S. Mogali, S. Comer, Polydrug abuse: a review of opioid and benzodiazepine combination use, Drug Alcohol Depend, 125 (1-2) (2012) 8-18. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3454351/
[4] U. Garg, Chromatography in therapeutic drug monitoring of nonnarcotic analgesics and anti-inflammatory drugs, in: A. Dasgupta (Ed.), Advances in chromatographic techniques for therapeutic drug monitoring, Taylor & Francis Group, Boca Raton, 2010, 385-396.

関連検索

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